• 2018/06
  • 28 Thursday
  • 23:00

旅の最中の一時

まだ、この旅が始まって間も無い頃。

アメリカ東海岸ボストンの隣街・ウースター。
コンベンションを終え、荷物を纏めて会場を出ると、
一人の老人が声を掛けてきた。

「クレイジーなシルバースミス。良かったらシガーでも?」

クリエイトに集中していて気が付かなかったが、
老人はコンベンション会場で俺の作業を見ていたらしい。

差し出されたシガーを有り難く受け取り、
老人と会話しながらベンチでシガーを楽しんだ。



日本から来て、これからアメリカ横断すると言った俺に、
老人はベトナム戦争に従軍し、その流れでタイや香港、
日本にも行って色々な物を見た時間の話をしてくれた。

純粋に俺のクリエイションを楽しんだから声を掛けて、
俺の為に何かをしたいと感じたんだ。そう言っていた。

そんな老人の表情を見ながら、
きっと、この時間が彼が俺に与えたいスペースなんだと、
旅の最中の一時に、煙を燻らせながら感じていた。

人は、自分のアクションの先を思う。
水を飲めば喉が潤う。
殴れば痛みを与えられる。
誰かに頼めば助けてくれる。

アクションに込められる意志の中身は、
思惑だったり、押し付けだったり、理想だったり。

心配が理由の行動は、優しさと勘違いされ易い。
良く無い結果に耐えられない、対処出来ない自分を、
味わいたく無いだけでする行動は、優しさだろうか?

「大丈夫?」苦しそうな誰かに、そう声を掛けるのは、
苦しそうな誰かを見て、不安な自分の為じゃないだろうか?

優しさは、自分のスペースに誰かを少し入れられる事。

自分の不安や心配が大きくなって、
貴方の口から出てくる「大丈夫?」は、
自分のスペースに余裕が無いからじゃないだろうか?

誰かを少し、日々の苦労で一杯な自分の中に少し、
スペースを空けて入れたくなるのは、
その誰かの何かに希望が在るから。

一般的な恋愛に於いてよく言われる。
女性の方が別れと共に相手を切り捨てるのが早いのは、
肉体的に子供を産む為のスペースが必要で、
それが精神構造に影響を及ぼすから。

身近な誰かを傷付けたり殺めてしまうのは、
その人に対するスペースを保てなくなったから。

誰かの為に、自分の中にスペースを用意する。
相手の話や状態や状況からフォルムを読んで、
其れに合わせようとスペースのサイズを決める。

いつしか、自分でも気が付かないうちに、
サイズは変わり、相手のフォルムも変わって、
居心地の悪さが生じた頃に、優しさが薄れてしまったと、
そんなふうに感じてしまうのかも知れない。

家や学校や会社に、居場所が無いとか感じるのは、
相手や環境のせいじゃなく、自分のフォルムが解らなくて、
居心地が悪いまま合わせるサイズが読み取れない。
そんな自分が存在しているからかも知れない。

善悪や正誤の基準は、とても移ろい易いものだから、
善く見える、正しく感じる解り易い施しだけが、
誰かからの優しさだと思ってしまうよりも、
誰かが自分の為に与えてくれる純粋なスペースに存在する、
相手を思い遣る希望が、優しさだと信じて旅をしていたい。

自分が誰かの為にするアクションの先に希望を少し。
日々が慌ただしく苦労で一杯な自分であっても少し。
一時でも誰かの居場所になれるスペースを少しだけ。

旅の最中、
もう会う事も無いだろう一時に感謝を込めて。

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