Xジェネレーション。
世紀末の混沌が産んだ最期の世代。
自力で情報を探し産み出そうと足掻いた時代の終わり1990年代。
古い世代をぶち壊そうと躍起になりながら世紀末を彩ったカオスは、
21世紀という幻想が、やはり幻想でしかないと嘆いて終わりを告げた。
誰もが夢見た未来都市は無く、世界平和も2001年宇宙の旅も無いと、
全て解ってしまっていた90年代の世紀末感の空気を
パニックムービーの巨匠、ジェームス・キャメロンが逃す筈も無く、
当時のカミさんキャスリン・ビグローを監督に投入して撮った作品
「ストレンジ・デイズ」
元々は結構なエグさの小説作品を映画に合うよう脚本を書き上げ、
製作からカメラワークまで、どう観てもキャメロン節が唸ってるが、
後に「ハート・ロッカー」でアカデミー賞を獲得したカミさんのキャスリンも、
見事なモブシーンを仕立て上げて辣腕奮ってます。
「ブレード・ランナー」から後の「ゴースト・イン・ザ・シェル」
「マトリックス」まで続く、黒地に蛍光グリーンのデジタル文字オープニング。
サイバーパンクな雰囲気と浅くブルーがかった映像。
流石はキャメロン先生と言わせないと気が済まないんだろうな。
ってぐらいに演出やシーンに他作品へのオマージュも大量投与。
単純にデジタルでサイバーパンクな世紀末ってんじゃなく、
何処か人間臭い部分の根っ子が強いのは、キャスリン・ビグローの力だろう。
キャメロンだけだと何でもパニックタイタニックになりがちだ。
主演は「クイズ・ショウ」「イングリッシュ・ペイシェント」
最近だと「ハリー・ポッター」シリーズに出演してるが、
飛行機内でナンパした女性と事に及んでしまうスキャンダル起こしたりな、
イギリスの伊達男、レイフ・ファインズ。
持ち前の腰の軽さが見事に演技に活かされてます。
ヒロインには90年代のNo.1餅巾着女優、ジュリエット・ルイス。
「トゥルー・ブルー」「カリフォルニア」「蜘蛛女」ときて、
「ナチュラル・ボーン・キラーズ」でも、不安定なビッチ役を演じてますが、
今回も見事なまでのビッチ役を演じてます。
もう一人のヒロインには、「スコア」での、デ・ニーロの恋人役や、
「マルコムX」でも気丈な演技が際立つアンジェラ・バセット。
敵役にマイケル・ウィンコット。いつ観ても存在感が半端じゃない。
「クロウ」「蜘蛛女」「デッドマン」でもひたすら渋かったが、
最近の作品「トラブル・イン・ハリウッド」でのキレた監督役も見事。
「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」での、ショーン・ペンとのシーンは、
存在感のぶつかり合いが素晴らしかった。必見!!
これだけでも俳優陣が凄いのに脇も全然甘くないのが、この作品の凄いとこ。
コールガールに、絶叫女優ブリジット・バーコ。
今回も期待に応えて酷い目に遇わされてます。
「ヒート」でもそうだったが、ゲスな空気感を漂わせたら主役級。
いるよなぁ、こーゆーオッサンがアメリカに。
な、私生活もトラブルだらけ、トム・サイズモア。
警官役には、なんと「フルメタル・ジャケット」の微笑みデブを演じ、
狂気の代表者の一人になった、ヴィンセント・ドノフリオ。
狂気にまみた演技は今回もやってくれてます。
もう一人の警官役には、ウィリアム・フィクナー。
性格に問題ありそうな演技の脇役やらせたら一級品質。
多くの作品に出演してるので、彼の演技は誰もが一度は目にしてるでしょう。
この作品の凄さは色々ありますが、痺れるのは衣装デザイン。
80年代から引っ張ってる派手さと世紀末の退廃性。
加えて未来的な要素を少し感じさせながらもパンクな雰囲気。
(多分、「ブレード・ランナー」意識したであろう)
そして、音楽も凄い。(ジュリエット・ルイスの歌は上手くないけど)
挙げるとキリが無いので割愛しますが、
作品を通してのミクスチャー具合がまさに90年代。
グレーム・レヴェルが担当してるだけに同時代の作品、
「クロウ」にも通ずるものが随所にあり、
サイバーパンクになりきらせずに、未来感を損なわない。
やはり映画と音楽の関係性は深い。
この作品を観た当時の俺は、ソッコーでレイフ・ファインズが着てた、
ロングジャケットとネクタイ探しに行ったのはアホな思い出。
ついでにサントラ買ったり、「ブレード・ランナー」観直したり、
未だに年に何回か観るのが、この「ストレンジ・デイズ」
にも、かかわらず。
何年経ってもDVDは再発売されずな状態。
以前、雑誌で映画コラムやってる時に、
「蜘蛛女」と「ストレンジ・デイズ」が再発売されない事を
発売元に何度も文句言ったぐらいだ。
(その甲斐あってか、きっと関係無いが「蜘蛛女」は再発売された)
さて、全く内容に触れずに書いてきた「誰も観てなさそうな映画」
基本的に作品批判と内容バラすのが好きじゃないので、
どうやって観てなさそうな映画を観たくさせるかと思い書いてましたが、俺。
お気付きの方もいらっしゃるように、90年代作品だけを紹介してきました。
個人的に90年代は映画の大きな転換期であったと思います。
他の年代にも素晴らしい作品は多く存在するし、
年代だけで作品をくくるのはどうかと思うが、
90年代に共通した世紀末感は、やはり独特の魅力です。
映画に限った事じゃなく、作品に触れてみたくなる要素ってのは、
作品そのもの以外のトコにも多く存在します。
それが作品に深みを増す要因にもなったりはするんだが、
結局は百聞は一見に如かず。
きっと、俺が書いてるような事も、ネットで検索しまくれば、
作品観終わるよりも早く知る事が出来るでしょう。
でも、それは所詮ただの知識でしかない。
作品に触れるという個人の経験に勝る事はありません。
なので、是非とも観てなさそうな映画を観て下さい。
映画を観るのに必要な時間は2時間程度ですが、その経験は一生です。